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仕事の枠を越えて地島で活動する土建屋さん/井上憲司さん

井上さんこんにちは。地島ではどんなことをしているんですか?

藪を切り開いて開墾してます。今は行政や島の人達と一緒に島らっきょうを作っていますよ。本業は、上八に事務所を構え、沖ノ島や大島、玄海島、相島など島々で土木建築を行なっています。

開墾するきっかけはなんだったんですか?

地島の厳島神社の裏にある杉を切ってほしいという依頼を受けたときのことです。その現場に行くまでが藪だらけだったので道を作るところから始めることにしたんですが、地元の人いわくそこにはもともと畑があったとのこと。

昔から島に住む人は半農半漁で自給自足の生活をしていたんですが、人が減って畑や道が藪に飲まれるようになるとイノシシが増えて、特産品だった芋も食い荒らされてしまったんです。畑を再開しようにも、年寄りばかりだからなかなか開墾もできない。

そんな状況の島に何かできることはないかと、島や行政の人と話していました。だったらうちにはトラクターや機材があるから、それで開墾した畑を島の人で耕しませんかということになって。島らっきょうはイノシシも食べませんから、ゆくゆくは島の若い人が耕して臨時収入にでもしてくれたらいいなぁと思ってます。

井上さんは上八出身ですよね。他の島にも出入りしているのに、なぜ地島にそんなに精力的なんですか?

地島は第二の故郷のようなものなんです。親の代からいろんな島で土木工事をさせてもらってるんですけど、24歳の時自分が初めて携わった仕事が地島小学校の工事でした。

島には中学のときの同級生もいたので、泊まり込みで工事作業していたときは同級生の家族がおかずをくれたりとてもかわいがってくれました。今では逆にうちの事務所に島の子ども達がバイトにきたり、近くに来たときは訪ねてきてくれたり、ずっと昔から島の人と家族ぐるみで付き合ってきています。

だから島に元気がなくなってきていると何かやりたいというか、やって当たり前なんですよね。これは他の人にはわからない感覚だと思います。

畑の他に、藪に埋もれた民宿施設を掘り起こして使えるようにしたり波止場の整備をしたりと、ボランティアで動かれることも多いそうですね。島の人の反応はどうですか?

みんな喜んでくれて、「うちの藪も畑にして」と声をかけられたりもしますね。市の方も協力的ですし、  島の人も前向きに活動に参加してくれます。

島でできることを模索する中で島に愛着を持つ人や企業が増えてきたり、若い人も帰ってきたりして、輪が輪を呼んでいるなーと感じます。

僕は自分のトラクターを島に持ち込んでいるんですけど、それも事情を知った近所の方がおさがりを譲ってくれたからなんです。金銭ではなく、みんな験担ぎというか、お互い様の心で動いています。みんなが寄ってきて協力しあえているのが嬉しい。

周りからは「どうしてお金にならないことをするのか」と首をかしげられますけど、信頼関係が生まれて結果的に仕事を頼んでもらえたりしますから、それで充分です。

これからやっていきたいことは?

天然の釣り堀とか里芋作りとか、島のためにできることはどんどんやっていきたいですね。何でもまずは小さく試験的に始めてみて、続けられそうだったら続ける。何事も楽しんでやらんとですね。

プロフィール

井上憲司(いのうえ けんじ)さん
兄弟経営「株式会社 井上組」の弟

先代から上八で(株)井上組を家族経営している。島の港湾土木が得意で、第二の故郷地島のことなら土木以外のこともなんでもこいの精通者。地島を元気にするためにさまざまな取り組みを企て奔走中。

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